BIOGRAPHY

その探偵事務所の扉をノックすれば、そこから物語がはじまる。
誰かが、ちょっと不思議で、ちょっと難解で、ちょっとおもしろい事件をそこに持ち込んでくる。
例えばそれは憂鬱な雨の日に届く、ささやかな朗報のように。
不可思議な事件は、その扉がノックされれば目を覚ます。

「ねえ、シャーロックさん」とバタフライみほは言う。
「なぜシャーロックさんはいつもそんなに謎が解けちゃうんですか?」
セバスチャンがそれに答えて言う。
「そうだな。確かにいつも不思議なほど事件の核心にたどり着くよな、シャーロックは。一体お前には何が見えてるんだ?」
シャーロックは少しだけ笑って答える。
「たしかに、それはいい質問だね。その謎だけはどうやら私にも解けないようだ。」
そういって、シャーロックは二人の顔をかわるがわる見つめる。
「謎はね、解けると思ってみてはいけないんだよ。謎としてそのまま受け入れてしまえば、自ずと答えは見つかるもんさ。大切なのは謎に立ち向かうことではなくて、謎の中に忍び込んでしまうことさ。」
そういって、シャーロックはパイプをくゆらします。
セバスチャンとバタフライはなんだかわからないような顔をしてその場にたたずんでいます。
セバスチャンがあきらめたように首を左右に振って言いました。
「さあ、わかる人にはわかるべきことがわかり、そうでない人にはそうでないことがわかるってことだな。さあ、どうだい二人とも、私の入れた紅茶を飲まないか?」
「わーありがとうございます。わたし、セバスチャンさんの入れる紅茶大好きです」とバタフライは言います。
「私には君の入れる紅茶がなぜそんなにおいしいのかはわからない。君の紅茶は私にもわからないことはいくつかあるんだと思い出させてくれるよ」とシャーロックはいいました。

そんな風に。
そんな風に、コヨダレ探偵事務所の扉はノックされるのを待っています。
中では少し不思議な会話が交わされている探偵事務所。
ひとたびあなたがその扉をノックすれば、不思議な事件は幕を開け、音楽が流れ出し、ファンファーレが物語の幕開けを告げるでしょう。

さあ、ドアをノックしましょう。
あなたの今、目の前にあるその扉を。
そこが物語の入り口です。

ここはコヨダレ探偵事務所。
物語と音楽の真ん中にあります。
強く望みさえすれば、誰にでもその扉は見つけることが出来るのです。